非上場株式
会社を経営されている場合には、会社の株式に関する相続対策は重要です。
株式も当然に相続財産となり相続税の課税対象ですが、納税資金が不足したとしても、金融資産や賃貸不動産のように売ってしまう訳には行きません。
また、非上場株式の場合はその評価方法が複数あり、どの評価方法が適用されるかにより評価額が大きく変わります。
評価額の引き下げ
非上場株式の評価は、支配的株主か少数株主かで原則的評価方法と配当還元価額による評価方法に分かれます。
また、原則的評価方法は、会社の規模の大小により、会社の配当・利益・純資産を計算要素とする類似業種比準価額と、純資産価額に分かれます。
一般的には、純資産価額>類似業種比準価額>配当還元価額、の順に評価額が低くなりますので、持株割合を減らすことにより原則的評価方法から配当還元価額に変更したり、会社の規模を大きくすることにより純資産価額から類似業種比準価額に変更したり、評価額の計算要素である配当・利益・純資産を減らすなど、様々な方法により評価額を引き下げることを検討することになります。
持株割合を減らすと大きく評価額が下がりますが、同時に会社の支配権を失うことになるため、デメリットも大きなものとなります。
会社の規模を大きくする場合は、合併や事業譲渡の利用が検討されます。
評価額の計算要素である配当・利益・純資産を減らす場合は、役員退職金の支給や不良資産の処分の他、会社分割で高収益事業を切り出したり、合併により損失を引き継いだりといったことが検討されます。
その他、株式交換により評価額の高い会社を評価額の低い会社の子会社にすることで評価額を圧縮したり、従業員持株会を利用して相続対象となる株式そのものを減らすという方法もあります。
発行会社への譲渡による納税資金の確保
株式は売ってしまう訳には行かないのですが、発行会社自身に買い取ってもらうことはできます。
持株割合が変わらないように発行会社に買い取ってもらえば、支配権を失うなどの問題が生じないからです。
しかも、相続税の申告期限から3年以内であれば、特典があります。
株式を発行会社に売却した場合、通常は売却価格のうち会社の剰余金見合いの部分は配当とみなされて、最高税率50%で総合課税される配当所得になります。
これが、この期間内に一定の要件を満たすことにより、売却益に対する20%の分離課税となります。
また、相続税の取得費加算により相続税を売却益から控除することもできます。
非上場株式に係る相続税の納税猶予制度
経営を承継させるための株式の相続として一定の要件を満たす場合には、非上場株式に係る相続税について納税猶予を受けられます。
ただし、申告期限後5年間で従業員の数が平均2割超減少するなど一定の場合に該当すると納税猶予が打ち切られ、利子税と合わせて納税しなければなりません。
また、納税猶予額に見合う担保を提供する必要があります。