Archive for the ‘お知らせ’ Category
暦年贈与のサポートサービスに関する贈与税の取り扱いと国税の見解
信託銀行などにおける暦年贈与のサポートサービス
近年、相続税の基礎控除の引き下げや土地の評価額の上昇等により、相続税の課税対象となる方が増加しており、相続税対策のニーズが増加している。
これらを背景に、信託銀行などにおいて、暦年贈与を行う場合のサポート業務を開始している。本来の信託銀行のターゲット層とは異なるようにも思われるが、顧客層の裾野を広げる目的があるのでは推測される。
暦年贈与のサポートサービスの内容は、概略は、暦年贈与契約を信託銀行で作成し、贈与者から贈与を受ける方へ渡され、毎年双方の意思表示を確認し、贈与契約が締結される。そして、当該贈与契約に基づいて、贈与者の預金から贈与を受ける方へ預金が移動するといった内容である。
また、当該暦年贈与サポートサービスが定期金の給付契約に該当しないよう、主に下記のような点がケアされているようだ。
1.贈与契約は毎年、双方の意思表示を確認の上で実施する
2.意思表示によっては、贈与が行われない年もある
3.贈与契約書の提出は、年ごとに提出期間が決められている
定期金給付契約に該当するか、国税局へ事前照会がされる
この贈与サポートサービスであるが、当該サポートサービスによる贈与が、相続税法24条に定期金給付契約に関する権利に該当するいか否かにつき、某銀行より、東京国税局へ事前照会がなされております。
ここで、「定期金給付契約に関する権利」についてご説明します。この権利は、いわゆる「年金受給権」です。例えば、父が子供に対して5年間、毎年100万円ずつ贈与する場合、この行為は、相続税では下記のような二つの捉え方をすることが出来ます。
1.5年間にわたり、毎年100万円ずつ贈与する贈与をうけた
2.5年間にわたり、毎年100万円ずつの支払、総額5000万円の支払を受ける権利(=「定期金給付に関する権利)を取得した
この場合、上記1では、毎年贈与を受けているわけですから、贈与税の基礎控除110万円を使うことで、贈与税は生じません。
贈与金額100万円 - 基礎控除110万円 = ▲10万円 ⇒ 課税なし
一方、上記2では、一時に500万円の支払を受ける権利を得たわけですから、500万円に対して贈与税が生じます*1。
贈与金額500万円 - 基礎控除110万円 = 390万円 ⇒ 課税あり
*1 実際には、500万円がそのまま課税されるわけではございませんが、話を簡略化するために、仮に500万円とさせて頂いております
この東京国税局の回答では、本件暦年贈与サポートサービスは定期金給付契約に関する権利に該当しないこととされており、今後、さらに暦年贈与サポートサービスの利用が増加する可能性があると考えられる。
暦年贈与についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
相続した空き家にかかる譲渡所得の3,000万円控除の特例および通達改正
平成28年度の税制改正により、今年4月1日より、一定の要件を満たす空き家の譲渡により生じた譲渡所得につき、3,000万円の控除が認められている。従来より、譲渡所得にかかる3000万円控除の特例はございましたが、当該制度は自己が居住する等の不動産を売却することを前提とした制度でしたが、今回の平成28年度税制改正においては、相続した空き家を譲渡した場合でも対象となります。
特例の対象となる家屋は次の要件を満たすことが必要である。
① 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
② 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
③ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く。)であること
④ 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
(※ 相続した家屋を取り壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について相続の時から当該取壊しの時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと)
さらに、今回の特別控除は、自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除又は自己居住用財産の買換え等に係る特例措置のいずれかとの併用が可能であり、また、相続財産譲渡時の取得費加算特例と選択適用とされているため、事前に十分なプランニングが必要と考えられる。
なお、平成28年8月2日に国税庁より、平成28年度税制改正に対応した租税特別措置法通達が公表されており、今回の空き家の譲渡にかかる取り扱いについて示されている。
弊社では空き家の譲渡所得にかかる特別控除に関するご相談を承っておりますので、もっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
事業再生とオーナーの相続税対策
事業再生においては、再生対象企業の法人税や消費税のほか、オーナーの相続税への配慮が必要なケースがある。特に、平成26年(2014年)度税制改正により、平成27年1月1日以後、相続税の基礎控除額が従来の6割に引下げられたことで、相続税の納税が必要なケースが増加して、中小企業の事業再生の局面で、相続税対策が必要なケースは増加している。以下では、典型的なケースを3つ挙げ、それぞれ解説を行う。
1.オーナーが再生対象企業に対して、多額の貸付金を有しているケース
再生対象企業では、資金繰りが上手くいかず、オーナーから多額の借入を受けているケースがある。この場合、当該借入金は、オーナーにおいて再生対象企業に対する貸付金となって、私的整理のケースでは、原則的には、その額面が相続財産として課税対象となり得る。
但し、例外規定として、額面以下の金額で評価できるケースが財産評価基本通達205に示されており、私的整理の際にはオーナーの相続税対策を含めて、オーナーからの借入金への対応を再生計画に盛り込むことを検討すべきである。
2.再生対象会社が、実態ベースは債務超過であっても、相続税評価では株式に課税がされる場合
再生対象会社では、多額の不良資産を有している場合がある。例えば、売掛金や在庫、オーナーなどに対する貸付金である。実態BSなどを算定する際には、これらの不良資産は会計的に減額して評価されるが、相続税の評価では、原則的には、額面として評価される。
この場合、実態BSでは、債務超過であったとしても、相続税の評価では資産超過であるというケースが生じることとなり、オーナーの株式は相続税の課税対象となり得る。
3.オーナーが再生対象企業に対して、保証債務などを有する場合
オーナーが、再生対象企業に対して保証債務を負っている場合がある。特に、中小企業では殆どのケースで該当する。
この保証債務であるが、相続税の評価上は、原則として、債務とならず、相続財産から控除することができない。そのため、私的整理の局面では、今後保証債務の履行が十分に見込まれる場合には、予め事業再生計画に反映しておくことが必要と考える。
参考条文:財産評価基本通達204、財産評価基本通達205
オーナーの相続税対策についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
平成27年1月1日から、小規模宅地等の特例の適用限度面積が拡大されます
Q
小規模宅地等の特例について、平成27年から適用限度面積が拡大されるとききました。具体的にはどのように拡大されるのでしょうか。
A
平成27年1月1日以後に生じた相続については、小規模宅地等の特例の適用限度面積がそれぞれ次のように拡大されます。
特定居住用宅地等
240㎡→330㎡
特定事業用宅地等と特定居住用宅地等を併用する場合
特定事業用宅地等+特定居住用宅地等×5/3≦400㎡(特定居住用宅地等の面積を400㎡ベースに引き直して、合計で400㎡まで)
→特定事業用宅地等+特定居住用宅地等≦730㎡(面積を単純合算して730㎡まで)
貸付事業用宅地等を含めて併用する場合
特定事業用宅地等+特定居住用宅地等×5/3+貸付事業用宅地等×2≦400㎡(特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等の面積を400㎡ベースに引き直して、合計で400㎡まで)
→特定事業用宅地等×200/400+特定居住用宅地等×200/330+貸付事業用宅地等≦200㎡(特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等の面積を200㎡ベースに引き直して、合計で200㎡まで)
特定居住用宅地等の適用限度面積が拡大され、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等はそれぞれの適用限度面積まで併用可能となりました。貸付事業用宅地等を併用する場合は、限度面積の調整計算がされることは改正前と同じですが、特定居住用宅地等の適用限度面積が拡大された分、拡大されます。
小規模宅地等の特例は、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等については80%、貸付事業用宅地等については50%と、評価額を大きく引き下げることができます。適用対象となる土地の坪単価と適用限度面積を考慮して、賢く利用しましょう。
小規模宅地等の特例についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
平成27年1月1日から、相続時精算課税制度の適用範囲が拡大されます
Q
相続時精算課税制度の利用を検討しておりますが、平成27年から適用範囲が拡大されるとききました。具体的にはどのように拡大されるのでしょうか。
A
平成27年1月1日以後に行われる贈与については、贈与者(贈与する人)と受贈者(贈与される人)の範囲がそれぞれ次のように拡大されます。
□贈与者(贈与する人)
65歳以上の父母→60歳以上の父母又は祖父母
□受贈者(贈与される人)
20歳以上の子→20歳以上の子及び孫
なお、年齢はいずれも贈与した年の1月1日時点で判定します。
現状では原則として親から子への贈与が適用対象でしたが、平成27年からは、祖父母から孫への贈与も適用対象となり、かつ、贈与する人の年齢要件が65歳以上から60歳以上に引き下げられます。
相続時精算課税制度のメリットは、こちらとこちらをご覧ください。
相続時精算課税についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
住宅取得等資金の贈与税の非課税を活用して生前贈与が活用できます
Q
私には、子供が一人おりますが、子供がマイホームの建設を検討しているようです。そこで親として資金支援をしたいと考えていたところ、平成26年12月末までの資金支援であれば贈与税がかからないという話の聞いたのですが、詳しく教えて頂けないでしょうか。
A
住宅を取得するための資金の贈与で、平成26年12月31日までに行われるものであれば500万円までは非課税となります。
なお、住宅が一般住宅ではなく一定の要件を満たした省エネ・耐震住宅であれば1,000万円までは非課税となります。
さらに、東日本大震災の被災者であれば一般住宅は1,000万円、省エネ住宅であれば1,500万円まで非課税となります。
この制度を利用するためにいくつか要件があり、大きく制度利用者に係る要件と、住宅に係る要件があります。主な要件は次の通りです。
1.制度を使用できる者
次の全ての条件を満たす必要があります。
(ア) 日本国内に住所があること
(イ) 親から子への贈与であること
(ウ) 贈与の年の1月1日に20歳以上であること
(エ) 贈与の年の所得が2,000万円以下であること
(オ) 贈与の年の翌年3月15日までに住宅を取得等し、その家に住むこと
2.住宅に係る要件
(ア) 建物床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下で、半分以上に相当する部分に受贈者が居住すること
(イ) 建売住宅の場合は、未使用である
(ウ) 20年以内に建築されたものである
(エ) 中古住宅の場合は、耐震基準適合証明書で証明されている
(オ) 増改築の場合は、工事費用が100万円以上である
これらの要件ですが、意外と所得には留意が必要で、生前贈与の一環として親が主導して贈与を検討しているものの、実際に受贈者側の子が不動産や株式などの運用により一時的に所得が多くなっているケースもあり得ます。
そのため、細かい要件は専門家の確認を得て贈与を行われることをお勧めいたします。さらに、贈与を受けた場合には、確定申告が必要となるため、そちらも併せて対応してもらうほうが無難かと思われます。
生前贈与や住宅取得等資金の贈与税の非課税についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
相続税の配偶者控除は、賢く利用しましょう
配偶者控除は、相続税の計算において非常に多額の控除を受けられる制度です。
1億6千万円と配偶者の法定相続分のうち、いずれか多い金額が非課税となります。
平成27年から相続税の基礎控除額が4割も減少することを考えると、多額の控除が受けられる配偶者控除は積極的に活用したい制度です。
しかし、配偶者控除にもいくつかの欠点があります。
一つ目の欠点は、文字通りではありますが、被相続人の配偶者でないと控除を受けられないことです。当たり前の話ですが、例えば既に父が亡くなっている状態で母が亡くなり、財産を子だけで相続する場合には、配偶者控除の適用はありません。父の相続時(以下、「一次相続」といいます。)には母が相続する財産に配偶者控除を適用できましたが、次に迎える母の相続(以下、「二次相続」といいます。)では配偶者控除の適用がないので、多額の相続税が発生してしまう可能性があります。
二つ目の欠点は、一次相続において、配偶者控除の適用額を多くするために母が多額の財産を相続した場合、二次相続での相続税が増えてしまい、一次相続と二次相続をあわせて考えると相続税額が増えてしまう場合があることです。
配偶者控除は、二次相続まで考えて賢く利用しましょう。
配偶者控除の有利な適用についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
贈与税の相続時精算課税制度によるメリット
相続時精算課税制度は、早期に親世代の資産を子世代に渡すことで、社会の資金循環がより活発になることを期待されて導入されました。
贈与税の課税方式には、贈与があった都度申告納税を行う「暦年課税」が原則ですが、一定の要件を満たす場合には「相続時精算課税」制度の適用を選択することができます。
「相続時精算課税」制度は、毎年の贈与の都度贈与税を申告・納税し、その贈与者がなくなった際に、それまでの贈与財産の総額と相続財産の総額から算定した相続税から、これまでに申告・納税した贈与税相当額を控除することができる制度です。
この制度を適用することができる者は、贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の子などとされております。
相続時精算課税を使う場合には、2,500万円までの贈与は贈与税が課されないため、相続財産が基礎控除以下と見込まれる場合には、活用のメリットがあります。
その他に現役世代が有効な資産活用を行うことができる点が挙げられます。例えば、アパートなどの賃貸不動産を有する場合、建物を維持管理し、有効な資産活用を行う過程で、リノベーション等を検討するケースがありますが、そのような場合にはある程度のエネルギーが必要ですが、そのような負担を現役世代が行うことでさらに長期的な資産運用が可能となるケースも考えられます。
なお、弊社では不動産投資を含めた相続税対策のご相談を承っておりますので、相続時精算課税と相続対策についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
老人ホームと小規模宅地の特例
小規模宅地の特例については、平成25年度の税制改正により、要介護又は要支援認定を受けていた被相続人が老人ホームに入所したことで空き家となった自宅の宅地等についても、特例の対象とされましたが、老人ホームに入所する場合の小規模宅地の特例の適用について注意すべき点を2点、確認したいと思います。
1点目は、老人ホームに入所する前に、親族等の家に転居する場合の取扱いです。
老人ホームは入居者待ちが多いため、長期間に渡り入所を待つケースもあり、入所を待つ間、親族等の家で世話になるために転居することがあります。このような場合、例えば、老人ホームへの入所時期が決まっていて、それまでの短期間だけ親族等の家に住んでいたなど、生活の本拠が親族等の家に移っていたとはいえないようなケースは問題ありませんが、入所できる老人ホームが決まるまで親族等の家に居住するといったように、生活の本拠が自宅から親族等の家に移ったと認められる場合は、被相続人が元々居住していた自宅の宅地等は、「老人ホームに入所する直前に居住の用に供していた宅地等」に該当しないことになり、小規模宅地の特例を適用することができません。
2点目は、入所した老人ホームについてです。
この特例が適用できるのは、「有料老人ホーム」に入所していた場合ですが、有料老人ホームの中には、老人福祉法に基づく都道府県知事への届出を行っていないものもあり、このような未届の有料老人ホームに入所した場合は小規模宅地の特例の適用対象とならないため、注意が必要です。
平成27年1月1日以後に開始する相続から基礎控除の縮小をはじめとする相続税の増税が予定されていますが、一方で、居住用宅地に関する小規模宅地の特例は、限度面積が240㎡から330㎡へと拡大されます。増税基調の中で、今後益々、小規模宅地の特例を有効に利用することが大切になるでしょう。
老人ホームと小規模宅地の特例の適用についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
節税_相続税増税と賃貸住宅建設
平成27年1月1日の相続税増税を前に、住宅メーカー各社が賃貸住宅の建設を強化しているようです。
相続税の増税は、平成27年1月1日から相続税の基礎控除額が現行よりも引き下げられます。具体的には、平成26年現在では“5,000万円+法定相続人1人当たり1,000万円”であるが、平成27年1月1日からは、“3,000万円+法定相続人1人当たり600万円”となり、さらに最高税率も引き上げられる。
このため、これまで相続税が課されなかった方も相続税の対象となる方が増加すると見込まれている。さらにこれらの方の多くが土地の評価額が主因となって相続税の対象となると見込まれていることから、土地に関連した節税商品として住宅メーカー各社が賃貸住宅の建設を強化している模様である。
では、なぜ賃貸住宅を建設することが相続税対策になるのかご説明いたします。この要因はいくつか存在し、大きく下記のような要因により相続税対策となります。
1.土地の評価額を下げる効果 ⇒ 貸家建付地による評価減の適用を受けられる
2.土地の評価額を下げる効果 ⇒ 小規模宅地等の評価の特例の適用を受けられる
3.建物の評価額を下げる効果 ⇒ 貸家による評価減の適用を受けられる
このように、単に更地として相続財産となる土地を保有しているよりも、賃貸住宅を建設したほうが、相続税法上のメリットを享受することが可能となります(なお、これらの規定の適用に際しては、適用要件が定められておりますので事前に確認することが必要です)。
しかし、一方でこれらの相続税法上のメリットが設けられている理由は、土地を更地で保有しているよりも不動産投資を行っている方が、投資リスクが生じているためとも考えられます。
従って、安易に相続税対策だけを目的に賃貸住宅経営を始めるのではなく、まずは不動産投資として採算がとれるかどうかを見極めたうえで、相続対策としても有効かどうかを見極めることが重要と考えます。
なお、弊社では不動産投資を含めた相続税対策のご相談を承っておりますので、賃貸住宅経営と相続対策についてもっと詳しく知りたい方は、↓までお問い合わせください。
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